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つゆだくチンジャオロースはナイジェリアの町中華になるか

研究をしている時でも、そうでない時でも、しばらく食べないとお腹がすく。人は何かを食べなければならないから、食べることは誰しもが避けては通れない営為である。何かを食べる時間から研究に接合し、興味深い知見に結びつくことがあるかもしれない。

アフリカ西部に位置するナイジェリアの大都市ラゴスには、万里の長城を彷彿とさせる壁で囲まれたチャイナタウンがある。

敷地内には主に中国製の衣類や革製品を扱う卸売りのテナントが入っており、そのほかには中国からやって来た人々のための住居や宿泊施設、それにレストランもある。そこで出される料理は、驚くほど普通に中国の料理である。

日本の町中華やアメリカ中華の定番だったチャプスイでも中華料理は独自に現地化して、かなりの年月を経たのちに、豊かなニューカマーの到来によって、「ガチ中華」のようなオーセンティックな料理が広まったプロセスとは対照的である。ナイジェリアの一般の人々には中華料理はまだ馴染みなく、しかも簡易な寿司以上の日本料理を出す店を見つけるのが難しいラゴスにおいて、中国の料理が普通に食べられることは驚きですらある。

一方で、ショッピングモールのフードコートには、現地の人向けにかなりアレンジされた中華料理店がある。チンジャオロースは、ご覧の通り、かなりつゆだくで、まるでスープのようだ。

ナイジェリアでは肉や魚のシチューやスープを、だんご状にしたキャッサバやタロイモとともに食べるかたちが好まれており、つゆだくチンジャオロースはこれに合わせてアレンジされたものだと思われる。中国から来た人は驚くだろう。しかし、日本の町中華にも、アメリカ中華にも、初めての人は意外な感じを受けるはずだ。世界にはたくさんの中華料理がある。ナイジェリアで地元の人々が中華料理を食する機会は最近増え始めたばかりだ。このつゆだくチンジャオロースがナイジェリアの「町中華」になる日は来るのだろうか。